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ベトナムにおける日本語教育事情

2016年3月、ベトナム全土の小学校で日本語を「第1外国語」として教えることをベトナム教育・訓練省が発表したのを皮切りに、ベトナムで日本語教育ブームが本格化しています。現地の日系企業で働きたい学生、日本に留学して就職を目指したい学生、日本とベトナムを橋渡しするブリッジ人材として活躍を目指す学生について紹介していきます。

ベトナムにおける日本語教育事情

ベトナムで日本語教育が活性化されてきた背景

20173月に独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)より発表された最新の外国人留学生在籍状況調査結果によると、ベトナムからの留学生は、中国人の98,483人に次ぐ53,807人となり、留学生全体の22.5%にも上る。日本語教育機関への留学生数に限ると25,228人で、留学生全体の37.0%で2位の中国(23,221人)を抜いてトップにランクされている。

ベトナムからの留学生は、平成244,373人、254,373人、だったが2626,439人、2738,882人、2853,807人とここ5年間で10倍以上となってきている。

ベトナム人の間で日本語を学びたい、また日本に留学したい学生が増えている背景に、ベトナム人は親日家である点があげられる。ベトナムに行ってまず驚くのがバイクの多さ。彼らの日常に欠かせない交通手段として定着しているバイクの中で、最も人気があるのが日本製のHONDAやYAMAHAのバイク。余談だが、北米はUberという配車アプリで車をタクシー代わりに活用するが、ベトナムでは、Grabというバイクタクシーが主流。街中にはGrabのロゴの入った緑のヘルメットと緑のジャンバーを着たバイクを多く見かけるようになってきた。また、自宅では、テレビや洗濯機なども日本製の白物家電の人気が高く、ベトナム人には、日本製は「質が高い」というイメージが定着している。また、橋や道路のインフラ、現在は地下鉄の整備にもODA等の国際援助として日本が協力していることもよく知られている。さらに、日本のアニメを見て育った若者は、日本食ブームで日本食を食し、日本人観光客やビジネスマンのマナーの良さを知り、同じアジア人としての同族意識も助け、とにかく日本人が大好きな若者が多い。

そんな中、ベトナム全土の小学校で日本語を「第1外国語」として教えることをベトナム教育・訓練省が発表したことで、さらに日本語を学びたいと思う学生が増え、日本に留学を希望したり、日本企業で働きたいという学生が急増してきている。

日本企業によるベトナム人の青田買いと日本語教育

労働人口が減少する中、発展するIT業界では、優秀なSEITスキルを持つ人材の確保に苦戦している。そんな中、白羽の矢が立ち始めたのが、ベトナム人の工学系大学の学生だ。ハノイ工科大学やホーチミン工科大学などの難関国立大学を卒業した工学部の学生を採用したい日系企業の担当者が、すでに大学を訪問し始めている。そのような大学では、日系企業、人材紹介会社、人材紹介と組んだ日本語学校等がスポンサーとなり、優秀な工科大学の学生に無料で日本語を教え始めている。

 

そのような動きの中で、ひときわ際立った動きをしているのが、ベトナム最大のソフトウエアアウトソーシング企業グループ、FPTコーポレーションによって2007年に設立された私立大学。日本語と英語が堪能なソフトウエア技術者を輩出することを目指しており、2年生からは日本語が必須科目となっている。企業が設立した大学ということもあり、企業が求める人材を徹底して育成していることで知られ、卒業後3か月以内に、98%の学生が就職を決めているという。

在校学生数は、約18,000人、キャンパスはハノイ、ダナン、ホーチミンにあり、ソフトウエアエンジニアリング、電子通信、コンピュータサイエンス、情報システム等の専攻がある。さらに、FPTでは、高度IT技術者を選抜し、1年間日本の語学学校に留学させ、日本で就職させるプログラムを開始し、日本のIT技術者不足の解消に動き出している。

日本で就職を目指すことだけに特化した日本語学校が開校

日常会話の習得や日本の大学進学を目指す日本語学校は多くあるが、おそらく日本で初めてとなる、日本で就職を目指すことだけに特化したリンゲージ日本語学校が201710月に東京・西新宿のビジネス街の中心にオープンする。講師陣は長年、日本を代表する大手企業で働いている外国人社員に日本語研修を実施してきており、日本の企業のニーズを把握している。さらに、講師は日本の企業でのビジネス経験があり、英語も堪能なため、日本企業の文化、ビジネススキル、マナーも教える。カリキュラムはビジネス日本語に特化し、さらに、日本語能力検定のN2も同時に取得を目指す。紙のテキストは一切使わず、全員に貸し出されるipadを使って、タイピングやプレゼンテーションはもちろん、リサーチ、レポートの作り方などの実用的なスキルも同時につけていく。IT技術者は、隣のビルにあるIT企業でインターンシップにも参加できるという。

同校は、ベトナムのIT技術者で留学を希望する学生が集まる日本語学校と提携を行い、年間40名の日本で働きたいベトナム人IT技術者の研修に一役買っていくという計画を発表している。

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