ICT教育ICT Education
シンガポールのICT教育の現状を把握し、そこから日本が今後国ぐるみで力を入れていくICT教育についての参考に出来ること、取り入れた方が良いことについて記載しています。
シンガポールは世界でも最先端のIT国家として知られていますが、今後のITの進化、イノベーションの大きな鍵を握るIoT(Internet of Things)の分野でも政府主導で取り組みを進めています。それは教育分野においても同様で、ICT教育でも政府主導で先進的な取り組みがなされています。シンガポールは都市国家として人が資源という考えが重要視されているため、次世代の人材育成は常に国家の重要事項と考えられています。ICT教育は他の国と比べてかなり早くから行われており、例えば現在では小学生からMS PowerPointなどを使ってのプレゼンテーションは日常的に行われています。
シンガポールは2008年から「フューチャースクール@シンガポール」という政策を行っています。この政策は国がイニシアティブをとり、ICTの利用環境を整備することによって、ICTを効果的に活用し、教授法や実践内容をめざましく変革させることを目的としています。例えば、フューチャースクールの指定を受けた小学校では1人1台コンピュータが使える環境を整備し、低学年がキーボードを打たなくても文字が使えるタブレットPCを使った共同学習によるデジタル・ストーリーテリングなどの実践、また指定を受けた別の中学校では1人1台のノートPC(MacBook)を入学時に購入して、数学と母語以外の理科、人文、語学、美術の授業で教材として活用しています。日本でもこのシンガポールの政策をモデルとして総務省主導する「フューチャースクール推進事業」が2011年から始められましたが、文部科学省との連携不足などの課題も明確になり残念ながら事業は既に廃止されてしましました。
ICT教育が国の未来にとっては大変重要であることは日本もシンガポールも認識としては同じだと思います。しかしそれを進めるための国の政策に大きな違いがあり、それが現在のICT教育の実施度の差につながっています。日本は既にICTインフラの国際比較ではトップクラスであるように、日本の教育におけるICT利用の環境は決してシンガポールに劣ってはいないと思います。ですが、子供たちの将来のためにICT教育を実施しようとする大人の側の実行力の差に大きな開きがあるのではないでしょうか。「ICT教育における先生の役割」の記事でも述べましたが生徒以上にファシリテーターとしての先生の役割不足な点が今の日本とシンガポールのICT教育での差になっているように思います。政府や省庁もICT利用環境のみを充実させていくのではなく、現場の先生の意識改革をリード、支援して進めていく必要があると思います。